開催の目的
火入れや、放牧、採草などによって維持されてきた半自然の草原や湿原は第二次世界大戦後、燃料革命などによって、価値が激減し、維持されている草原は希少となっています。明治時代は国土の20%を占めていた草原は現在では1%まで減少しています。
この希少なとなった草原を持つ自治体や草原に関わる全ての人々が集い、草原の価値や存在意義を全国にアピールするとともに、その自然環境や歴史的及び文化的な知識や技術を共有し、全国で取り組んでいる保全・継承活動の現状や課題について論議を深めながら、草原を維持するために連携していくことが、全国草原サミット・シンポジウムを開催する目的です。
過去の開催事例、内容
草原サミット・シンポジウムは過去13回、全国草原の里市町村連絡協議会に所属する草原を持つ自治体で開催されてきました(資料1参照)。同連絡協議会は28の市町村で構成され、持ち回りでサミット・シンポジウムを開催しています。各大会の内容構成はほぼ同じで、シンポジウムとしては、その大会の問題提起となる研究者等による基調講演会、参加者とともに課題を深めるための分科会(3~4課題)、そして、その地域の現状を確認するための現地見学会を行っています。サミットは全国草原の里市町村連絡協議会に加入している市町村の首長が大会会場に集まり、課題を協議した結果をその大会の「サミット宣言」として採択します。
おたり(小谷)大会の意義
小谷村には毎年「野火つけ」(山焼き)が行われている「牧の入茅場」(文化庁「ふるさと文化財の森」)や同じく「野火つけ」が行われ、地元で管理されている「雨中ショクの茅場」などが村の西側に広がっています。両茅場とも「茅葺き屋根」の材料となるカヤの生産地で、特に「牧の入茅場」は茅の中でも希少なカリヤスの茅(コガヤ)が採取でき、約1万把の収穫が見込まれ、これまでも、多くの重要文化財の屋根茅として用いられてきました。
令和2年「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」がユネスコの無形文化遺産に登録され、このなかに「茅採取」の技術も含まれており、小谷村で行われている茅刈りや茅立てが大きく脚光を浴びることとなりました。
このように手入れがされた茅が活用されている希少な茅場の存在を全国に発信し、草原に関わる人々とともに、草原の自然環境や、草原維持の知識や技術を次世代に伝えていく上での課題を考えていく機会にしたいと考えています。